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【試乗記】Bonneville T120

皆さんこんにちは。トライアンフ東京の蔡誠司です。今回はBonneville T120についてお話しさせていただきます。

■Bonnevilleの名前の由来

よく、Bonneville(ボンネビル)はイギリス車なのに、なぜアメリカの地名が車名になっているの?と聞かれるのですが、これは、アメリカ・ユタ州のボンネビル・スピードウェイで今でも毎年8月に行われている、最高速度を競うレースでの勝利に由来します。

スピードウェイといっても、いわゆる一般的なサーキットではありません。ユタ州にあるグレートソルト湖が干上がって出来た30000エーカーに及ぶまっ平でカチコチな平原(塩原)をコースに見立てて、そこをスピード自慢のマシンを駆って最高速度を競い合うのです。

このボンネビル・スピードウェイのことは映画にもなっており、題材は他メーカーのバイク「インディアン・スカウト45」の話になりますが、「世界最速のインディアン」と言うタイトルです。

これ、じつは私が最も好きな映画なんです。劇中、アンソニー・ホプキンス演じる主人公バート・マンローが、近所の子供と話している時、「このマシンでスピードに挑む時は5分が一生に勝る。一生よりも充実した5分間だ!」と語ったシーンが忘れられません。

1920年代に作られた非力なバイクを自らチューニングにチューニングを重ねて、世界最高速度を記録するバイクにまで仕上げた、不屈の精神の持ち主の話です。

と、少々、脱線しましたが、Triumphもこのボンネビル・スピードウェイで1955年、650ccのエンジンで時速193マイル(約309キロ)の最高記録を打ち立てています。そして、その翌年には同じエンジンの発展型で時速214マイル(約342キロ)を打ち立てているのです。

その後、ボンネビル・スピードウェイでの勝利を支えた技術力のフィードバックから作られた、画期的な高性能エンジンを搭載した新型車を1959年に発売することになりました。

当時、マーケット的にもアメリカは最大の市場規模を誇っており、そこでも勝利したいとの思いから、ボンネビル・スピードウェイでの勝利にあやかり、車名を「Bonneville」と名付けたそうです。

■スタイリング

いまのBonnevilleは現在の道路事情や排気ガス規制に適合するべく、最新技術でエンジン他を制御するようになっていますが、往年のモダンクラシックなデザインは受け継がれています。

空冷の時代から少しずつリファインされながらも、その美しさは今でも何ら変わりません。この見ていて飽きの来ないデザインは、様々なメーカーがお手本にしたそうです。

■エンジンの特性

低回転からトルクフルで非常に乗りやすく、そして心地よい排気音と相まって、トコトコと走るのが楽しい特性に仕上がっています。

国産のリッターバイクのような天にまで突き抜けんばかりに回るフィーリングはありませんが、120年の歴史が生み出すTriumph伝統のバーチカルツインエンジンの鼓動感は何物にも代えがたい魅力があります。

低回転では味わい深い鼓動感を生み出しつつ、クルージングでは程よいエキサイティング感を楽しめる、そんなエンジンに仕上がっています。

■ハンドリング

フロント18インチ、リア17インチという組み合わせのセッティングは現代風で、程よい軽快感に仕上がっています。フロントブレーキはT100のシングルディスクに対してT120はダブルディスク。その分の重さは感じ取れるのですが、これは2台を乗り比べて初めて分かるレベルです。

ブレーキのタッチはしっかりしていて、握り込んだ分だけちゃんと効いてくれる、さすがブレンボですね。

そして、これまたTriumphのノウハウが詰まった伝統のダブルクレードルフレーム、見た目は何の変哲もない鉄パイプを曲げて溶接しただけに見えるのですが、パワーとタイヤのグリップにマッチした秀逸なフレームで、Bonneville T120の素性の良さに貢献しています。

走りだせば237kgの車重は感じません。しかも、ハンドル切れ角も大きいので、ごく低速域での取り回しも楽ちんです。初めての道、ツーリング先での狭い路地、行き止まりでUターンするような場面でも、足付きの良さと相まって機動性は抜群です。

■足つき性

足付き性は低いシート高のお陰で、身長172cmの私の場合は両足べったりで安心です。小柄な体形の方でも大丈夫だと思いますが、足付きに不安な方はシート加工(アンコ抜き)でローシートにすることも可能です。

※写真はT120Blackのためマフラーが艶消し黒になっています。

■電子制御

T120には快適に高速道路をクルージングできるよう、シングルボタンで操作のしやすいクルーズコントロールが装備されています。

ライディングモードは「Road」と「Rain」の2種類です。トルク特性とトラクションコントロールの設定が調整され、悪天候の時はもとより、遠出の帰りで疲れている時にもパワーを抑えた走りが出来るので安心です。

ABSは万が一の時、急ブレーキで危険回避するような場面でもタイヤロックをすることなく、確かな制動力で車速を落としてくれる優れもので、普段はその存在を忘れてしまいますが、もはや安全なライディングには欠かせない装備です。私は過去に何度かABSに救われたことがありますので・・・。

★まとめ

厳しい排ガス規制「ユーロ5」に対応することが難しく、クラシックでオーソドックスなモデルが次々と廃盤となっていく現代にあって、変わらぬ高い質感で所有欲を満たし、そして、毎日乗って楽しく、いつまでもそばに置いていたいと思えるバイク、それがBonneville T120だと思います。

似たようなデザインのバイクは他メーカーでもありますが、あくまでも似たようなデザインです。乗り比べればわかります。Bonnevilleは唯一無二のバイクです。いつも忖度抜きにダメだしする私が褒めるのですから。それくらい歴史の重みを感じさせる秀逸なバイクです。

ぜひ一度、トライアンフ東京で試乗して、120年の歴史を感じてみてください。


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