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誰のためでもない 自分だけの世界(信州紀行 後編)
ワイナリーを後にした愛車・スラクストンは、天のお導きに従って(?)私を湯の丸高原方面へ連れて行ってくれました。
気持ちの良いワインディング。
右に左に…、軽快なダンスを楽しむ私とスラクストン。
その傍らでは、渓流が寄り添ったり離れたり。
標高が上がるにつれて少しずつ気温は下がり、樹々は色付いていきます。
これからの時季、この高原は雲海の名所となります。
月や星たちがまだ天空に残る明け方、成層圏に反射した太陽の間接照明によってぼんやりと周囲の視界が得られるような時間帯。
早起きをした人だけが目にできる、ご褒美のような雲海が眼下に広がります。
でも、今はお昼前なので雲海などは望めません。
過去に見た雲海と そのはるか彼方に見えた富士山を思い出しつつも、峠を越えた私は鹿沢経由でパノラマラインへ。
天気はイマイチでしたが、紅葉は正に今が盛り。
この写真の撮影中に前方から走って来たのはストリートトリプル!
もちろん互いにサムアップ!
まだ少し時間に余裕があったので、オフロードも楽しんでしまいました。
エンジンを止めると、聞こえてくるのは木の葉をくすぐる風の音だけ。
草原の向こうに広がる稜線を眺めながら大きく深呼吸。
朝、ワイナリーでもらったフライヤーをふと思い出して見返します。
長谷川真次個展『誰のためでもない 自分のために描いた 自分だけの世界』。
今、目の前に広がる樹木や草原さらに稜線は、もちろん私が描いた風景ではありません。
でも、今この瞬間だけは誰のためでもない自分だけの世界とも呼べるかもしれません。
パノラマラインから外れる場所に目印があったわけでもなく、気まぐれに入り込んだダートですので、今度またパノラマラインを走るときには場所がわからなくなっているかもしれません。
大げさに言うと、二度と出会えないかもしれない風景。
これもまた一期一会、ツーリングライダーの特権かもしれませんね。
そう思ったら、俄然この個展を観に行きたくなりました。
しかも、よく見ると開催日が今日まで!
俺、またもや導かれている?
会場は軽井沢にある信濃追分文化磁場「油や」内の「ギャラリー・一進」。
少しだけ遠回りになりますが、まだお昼前だったので迷わず向かいます。
軽井沢の追分は、国道から一本奥に入った風情のあるエリアです。
瀟洒なレストランやカフェがならぶ石畳をゆっくりと走り、信濃追分文化磁場「油や」に到着しました。
駐車スペースからして、すでにとっても良い雰囲気。
小春日和の中、レザージャケットを脱いで早速ギャラリーへ。
こぢんまりとした空間にならぶ作品たち。
オートバイを安全かつ快適に走らせるには、全ての感覚を研ぎ澄ませておくことが大切です。
その研ぎ澄まされた感覚のまま触れるアートは、いつもダイレクトに心まで届きます。
だから私はツーリング中に、しばしば美術館へ立ち寄ります(フダンハ メッタニイカナイ)。
※「撮影OK」って掲示されていました。
とても印象深い作品群。
中でも私が気にいったのは、これ ↓。
チンクエチェントも良いですが、この風景の中にオートバイを置いても素敵だなぁと思いました。
後で調べてみると、長谷川さんは上田市在住の画家でワイン用葡萄の栽培もなさっているとのこと。
きっとそのつながりで個展のフライヤーがワイナリーに置いてあったのですね。
ギャラリーを出た私は、同敷地内の各施設を散策。
素敵なカフェや雑貨、そして様々なアート作品が展示されています。
まさに「文化磁場」、磁力に視線が吸い寄せられるようで時が経つのを忘れてしまいます。
特に私の目を引いたのは、『春日紀子絵画展』
見入っていると、春日紀子さんご本人に声をかけていただきました。
ツーリング先でオートバイ談義になることは珍しくありませんが、今日はアート談義です。
作品から伝わる「樹木の視点における時間軸」や「動物と植物が持つ死生観の相違」などスピリチュアルな話題で楽しい時間を過ごすことができました。
みなさんもツーリング中に美術館の近くを通りかかったら、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
作品との出会いに驚く以上に、自分の中にある未知なるエリア(未開放の感受性)に驚くかもしれませんよ。
今朝、宿を出発した時には全く予想できなかったこの展開、そこでの出逢い。
まさにソロツーリングの醍醐味だと思います。
だから、オートバイを降りられないのでしょうね。
少し、陽も傾いてきたようです。
さて、旧碓氷峠でも通って東京へ帰りましょうか。
眼鏡橋の周辺も、きっと燃えるような紅葉に包まれていることでしょう。